ここを読んでいる読者諸氏なら当然先のドラえもんの間違いに気づいただろう。
顔の青い部分が目にかかってない、要は生え際が後退している状態である。
ドラえもんファンからすれば噴飯ものの間違いなのであるが、
その辺に歩いている人10人にドラえもんの似顔絵を描かせたら確実に3人、ヘタすれば5人の人間が
生え際後退ドラを描く。確実に。
昔から不思議でしょうがなかったのだが
なぜ、この生え際後退ドラがドラえもんの似顔絵としてポピュラーになっているのだろう。
さっそく検証してみた。
(1)絵描き歌の難しさ
ドラえもんの絵描き歌を覚えているだろうか?
まるかいてちょん
まるかいてちょん
おまめにねがでて
うえきばち
うえきばち
問題はこの「うえきばち」が2度続くところにあるのではないかと推測してみた。
1度目の「うえきばち」で連続した曲線を描いてしまったせいで
そのいきおいで2度目の「うえきばち」も連続した曲線で描いてしまい、結果、生え際後退してしまうのではないだろうか?
実際、生え際後退ドラを描く人は圧倒的に絵描き歌のポーズに倣ったドラえもんを描いているのだ。
しかも、描きあがったものは生え際を間違えたせいで微妙に縦長になっていることが多い。
その間違いを犯さないように絵描き歌では目を先に描かせているのだと予想できるのだが
目のところを飛ばしてうえきばち曲線を描くということは想像以上に難易度が高いようだ。
しかし、間違えているということに描いた本人は気づかないのであろうか?疑問が残る。
(2)ドラえもんを認識するための必要条件
絵描き歌とはよく出来たもので歌の指示にそって絵を描けば目的の絵が描ける。
逆に、絵描き歌を歌いながら描いたからという事実から多少の間違いがあっても
「これはドラえもんである」という認識が描いた人の中で生まれてしまうのではないだろうか?
これは確実に絵描き歌の功罪である。
大概の人は生え際の部分を間違えている以外に大きなミスは犯していない。
たとえば胴体を描く部分の歌詞、こちらのほうがずいぶんと難解で絵にしづらいものだとおもうのだが
ここを間違えている人はそうそういない。
6月6日にUFOが
あっちいってこっちいっておっこちて
おいけがふたつできました
おいけにおふねをうかべたら
おそらにみかづきのぼってた
ひげをつけたらドラえもん
どうだろうか?6の字の片方は鏡文字を強要されているし、いけがふたつできたというのにまたさらにもう一個腹の部分にいけを描く矛盾。
「あっちいってこっちいっておっこちて」の部分など、なにかを模した絵ではなくUFOの動線に過ぎない。
一体どっちにいって落っこちたのかなんてわからないではないか!
こんな難解な部分は大多数の人が正しく描けるのに、なぜか生え際だけが大多数の人によって間違えられてしまう。
だが、絵描き歌によって描かれたという事実を背負った生え際後退ドラは
一箇所しか間違えていないのでほぼ正確に描かれたドラえもん、ということになってしまう。
むしろ、この生え際後退ドラはホンモノのドラえもんとは別種のドラえもんイコンとして市民権を得つつあるのが現状だといっても過言ではない。
藤子F先生という歯止めなき今、ドラえもんの仲間としてコイツがいけしゃあしゃあとホンモノのドラえもんの隣にいる未来というのもありえない話ではないかもしれない。
コイツはもしや、パラレルワールドからやってきたドラえもんなのではないか?
(3)実際に検証してみた
近くにいた人数人に絵描き歌によって描かれたものでないリアル生え際後退ドラの絵を見せてみたところ、
「どこがおかしいのか分からない」「よくかけたドラえもん」という回答を得た。
間違いを発見させるようにうながしてみたりもしたのだが、なかなか間違いを発見できない様子だった。
生え際後退ドラの侵食は思ったよりも進んでいるのである。
まるでコンピューターウィルスのように人々の認識のなかに入りこんでいる。
正直、ショッキングな結果である。
いくらちょっと妹のドラミみたいな生え際だからといっても間違いであることにはかわりないので
読者諸氏も生え際の間違いには今後十分気をつけてもらいたい。
文中、便宜上生え際と呼んでいますが正式名称は分かりません。ご了承ください。
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